プリントコラム

僕らが柄を着る理由

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2017年03月29日

皆様、こんにちは。オリジナル企画担当者です。

ホームページをご覧いただきありがとうございます。



プリント服地を日々作っている私たちにとって、プリント服地の持つ意味は何なのか、人にどのような影響を与えるのか、

実はあまり深く考えていなかった事をテーマにしてみました。

あくまでも私見で、偏った考えかもしれませんが、ご興味のある方はご一読いただければ幸いです。



人類の進化にとって、衣服はなくてはならない物になりましたが、プリント服地となると、

自分には必要ないという人もいます。

プリント服地に限らず、刺繍も先染めも、レースもジャカードも、余計な装飾要素は別に無くても、

凍える事もないし困ることもありません。


色に関しても同じ事が言えるかもしれません。極端な話をすれば、素材のままの生成り色だけでも、事は足りるのです。

しかし、私たちに限らず、装飾服地の商売で生計を立てている人が世界中に沢山いるのが現状です。

要は、無くて困らない物でも、人には装飾性の需要があるという事なのです。



そもそも柄は色と同様に、性別や身分、職業、季節などを表現するのによく使われていました。

モチーフは自然界から切り取った物が多く、時代に合わせて意匠化されていきました。

柄は身分や事象を伝えるのに、とても機能的な役割があったわけです。



では、現代では柄物を着たいシチュエーションとは、一体どういう時なのでしょうか?

お洒落に敏感な人はトレンドを意識して着る時もあるでしょう。

今シーズンはこの柄がマスト!スタイリングのアクセントに!と意気揚々と着られている印象があります。

そこまでお洒落にこだわりがない人でも、食事会やパーティーなどで少しでも華やかに見せたい時など、

何か特別な行事に柄物の着用率は上がります。

ファッションは自分を映す鏡だとよく言われますが、少し気分を変えたい時、パワーをもらいたい時など、

特に柄物は自分の個性や内面を表現しやすいのです。

そして、新鮮な柄物を着ていると、「素敵!」「どこの?」と、何かと周囲の人から話しかけられる事が多くなります。

普段とは違うファッションをして、ワクワクしたり、大胆になったりして、さらに人からの反応があるという事は

自分にとって嬉しい事です。



自分が他人からどう思われているのか、もしくは、他人の中に自分の像をどう築きあげるのかと言う行動に、

いわゆる思春期の頃から神経を使う事が多くなります。

「人は見かけが9割」という本がヒットするほど、驚くほど人は見かけに左右されるのが現実で、

皆それに気付き始めるのです。



自分と社会との擦り合わせ作業の中で、自己装飾性が一番効果的で、

私たちが普段から自然に取り入れている表現方法が色彩です。

目から入る情報のうち、80%が色の情報といわれていて、自分や周囲の人に様々な心理的効果をもたらします。

色には誰もが持っているイメージがあり、威厳がある黒、情熱的な赤、フレンドリーな黄色、知性なネイビー、

心穏やかなピンク、などすぐに自分の印象を築き上げる事ができます。

生成り色の服ばかりでなく、お店には実に様々なカラーで溢れています。

服に限らず、あらゆる製品にも大抵カラーバリエーションが用意されているという事から、

それだけ様々な色の需要があるのです。



それと同様に、装飾的な柄物を着るという事はもっと効果的な視覚伝達方法になります。

柄にも色と同様、誰もが共有できるストーリーがあり、

例えば千鳥柄はトラッドで保守的、ストライプやボーダーは爽やか、花柄はノスタルジックでフェミニン、

メッセージロゴや抽象柄は、アヴァンギャルドで攻撃的といった具合です。

それに加え、柄物を着る事によって、身体をスリムに見せたり出来る視覚トリックもあります。



かつてのように、性別や身分、季節の表現はだんだんボーダーレスになってきていて、

それをアピールする事自体、意味が薄れてきているのかもしれません。

誰もが知っているような高級ブランドを着たり、持ったりする事によって、自分が何者かを証明しようとしている人も

いますが、今となってはなんとなくスマートではない感じがします。


自分の性格や、物事の考え方、どのようなライフスタイルを送っているのか、

自分の「スタイル」を社会に表現していくのが現代です。

右脳的にも、左脳的にも自分を色彩や柄物で装飾をするという事は、より強く自分と社会への擦り合わせをして、

自分らしいスタイルを確認しているのだと考えられます。


勿論、社会との擦り合わせが上手くいかなくても、自分さえ良ければ、それはそれでOKです。

多くの価値観がカオス状態で存在する中、例え異端でも、受け入れてくれるような時代になってきました。

自分を装飾するということは、普段の自分から少し仮装をするような楽しい事で自由の象徴なのかもしれません。



だらだらと長文を書き綴りましたが、簡単にまとめると



柄物とは、自分と世の中をつなぐコミュニケーションツールの一つで、

着用する事によって、自分自身にも周囲の人にも、何かしらの心理的効果を生み出し、

本質的には非常にポジティブな物。



という事になります。



人によって自己表現の方法は違いますが、柄物が無くなると困る、寂しいと思う人も沢山いるので、

その需要で私たちの仕事が成り立っているのです。



柄に興味がある人にも、ない人にも、柄を着る理由なんてよく分からなくても、こんな柄だったら着てみたい!

着るとなんだか楽しい気持ちになる!というようなプリント服地を一つでも多く作って行き、世の中がなんだか

ポジティブな方向に向かっていく事を希望しながら、これからも制作に励んでいきます!